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欲しい一言

2018年03月07日
 こんにちは。アトリエくまの堀江です。すっかり春めいてきました。まだまだ寒い日もありそうですが、一か月前と比べれば、ずいぶん暖かくなってきたなぁとほのぼの思う今日この頃です。

 さて、今日のテーマは「ほしい一言」です。大人になり、ふと過去を振り返ったとき、あの時にあぁいう風に言われなかったら、今こうしていなかったかもしれないというような思い出が誰にでもいくつかはあるのではないでしょうか?もちろん悪い意味でのそういったセリフもありますが、今回はポジティブに切り替わったことについて、ちょっと思い出話をしたいと思います。

 これはボク、堀江和真の中学生時代の話です。当時のボクは勉強も普通なら運動神経も普通で部活動はテニスをやっていました。当時も絵を描いたり、モノをつくったりするのはすごく好きで、学校の授業でも、美術の時間はとても熱心に取り組んでいたように思います。ただ、いくら頑張っても成績は5段階でいって3止まりで、美術の先生に褒められたという経験は数えるほどしかありませんでした。まれに褒められても、思春期の真っただ中で、少しひねくれていたボクはほとんどの場合、無関心を装い、そのうちに自分でも白けてしまったのを思い出します。
 でも、今でもどうしても忘れない一言があります。中学2年生のころです。半年間ほどの短い期間でしたが、臨時でボクの学校に来ていた美術の男の先生に、「君なかなか良い絵を描くね。」と言われたことです。その先生はどこかのんびりした感じで、いつも同じジーパンをはき、いつもそれが絵の具で汚れている。そしてそれを指摘すると笑いながら奥に行き、上から違う色の絵の具をちょっとつけてきて、今違うのにはき替えてきたと朗らかに答えるといったような人で、よくわからないけど、こういう人のことをアーティストっていうんだろうなと感じました。ずいぶん経ってから、現代アートの作家さんなのではないか?ということに思いがいきましたが、それはその通りだということが後にわかりました。
 「君、なかなか良い絵を描くね」……ありきたりの言葉です。なにがそんなに良かったのか?そのときの気分とか先生の雰囲気とか、ロケーションがよかったのか?今でもよくわかりませんが、とにかくよく覚えています。そしてそれは今でもたまに思い出す言葉で、あれがあったから、今でも絵を描き続けているかな?と思います。
 あれから、約20年の時を経て去年の冬、先生とは再会を果たすことができました。現在のボクの作品をみて、「君なかなか良い絵を描くね」とは言ってくれなかったけれど、一人のアーティストとして迎えてくださり、あたたかい言葉と当時の思い出話、先生の取り組んでいるアートの話、現在教えている生徒の話など、さまざまな事を聞くことができました。
 そして、ここ5年ほどは、ボク自身も子どもたちに、絵や工作を教えるようになりました。ボクの目標の中で一番難しく、そして一番先生としてやってみたいことというのは、子どもたちにベストなタイミングで、心に残る言葉を言ってみたいということです。そして、できれば大人になったその子にそのことで感謝されてみたいと思っています。
 実現するかどうかは、これから先のお楽しみとして、とにかく精進していきたいなぁと思っています。




 


 相模原市緑区西橋本の子ども絵画造形教室 アトリエくま 堀江和真